2009/02/04

vampiric nymph

アラドバックステージ 闇夜の妖精



ダークエルフ(種族)

黒い肌、夜に輝く蜘蛛の巣のような白い髪をもつ堕落したエルフ。
人間をはじめ、妖精族、小人族たち他種族との仲があまり良くない。
基本的に非道で好戦的だが、その数は少数だ。
それでも彼らに喧嘩を売る者がほとんどいないのは、その強力で手に負えないダークエルフたちの魔法能力のためだ。
先天的に明るさが足りなくても遠くまで見通せる目をもち、行動が素早く残忍な性格の為、大陸各地で暗殺者として活躍している者たちもたまにいる。




アンダーフット(都市)

ダークエルフたちの首都。
アルフライラ山にその入口があるが、多くのモンスターたちがその道を守護している。
アンダーフットは、地下の奥深いところに位置しており、ダークエルフ以外にはその正確な位置を知り得る者はいない。
たとえ分かったとしても、幾多のモンスターたちを退けなければ辿り着くのは不可能なことだ。




ノイアフェラ(都市)

ダークエルフの村。
一瞬のうちに広がった伝染病によって住民が皆殺しにされた。
ダークエルフたちと仲の良かった占い師のアイリスの占いによって、その元凶が「人間」であると告げられた為に、現在ダークエルフと人間との間で戦争の火種となっている。
ダークエルフ界最高の錬金術師モーガンの家族が住んでいた場所でもある。
 →アイリスについては占い師と魔界戦記参照




メイア -MEIA-
種族:ダークエルフ
性別:女性
年齢:?歳(人間の歳だと約22歳)
所属:アンダーフット王宮(女王)

現在のダークエルフの女王。
幼い年齢にもかかわらず、非常に理性的で冷静である。
人間との戦争を始めようとする元老大臣たちの火のような怒りに対しても、正確な証拠がなければ、開戦の根拠となり得ないという立場を断固として守っている。
しかし、いつまでも自分の力だけでは元老たちを抑えることができないという事実を知っており、より詳細な情報を集める為に、人間たちの駐屯地に行ったクロンターたちに多くの依頼をしている。




シャープロン -SHAPHRON-
種族:ダークエルフ
性別:男性
年齢:?歳(人間の歳だと約63歳)
所属:アンダーフット王宮(長老様)

ダークエルフ元老大臣たちの中心人物。
ダークエルフの村に伝染病が広がって以降、女王に人間たちとの戦争を承諾することを力強く主張する。
頑固で、一度決めた事を推し進める推進力を認められ、他の元老大臣たちの尊敬を受けている。
一般的なダークエルフたち同様、魔法を使うことができない人間たちに対して優越感を抱いている。




マリス=モーガン -MALICE MORGAN-
種族:ダークエルフ
性別:男性
年齢:?歳(人間の歳だと約45歳)
所属:アンダーフット王宮(錬金術師)

王宮に仕える錬金術師。
伝染病によって自分の家族たちを全員亡くした。
人間たちに向けた恨みがあまりにも深い為、伝染病をまき散らしたのが本当に人間たちの仕業なのかを調査しにノイアフェラに向かうが、彼もまた伝染病にかかり死んでしまう。
とてつもなく大きな恨みを残して死んだモーガンはグールとなり、彼を見た人々は恨みのモーガン、すなわち「マリス」モーガンと呼ぶようになった。




クロンター -KLONTER-
種族:ダークエルフ
性別:男性
年齢:?歳(人間の歳だと約29歳)
所属:アンダーフット王宮→駐屯地勤務(伝令官)


クロンター

女王直属の伝令。
いつも淑やかな服を着ており、礼儀が正しく、壮健な20代後半の姿をしたダークエルフ。
ダークエルフの村ノイアフェラに伝染病をまき散らしたのが人間だとアイリスが名指しした為、人間たちとの戦争の危機が漂う中、人間たちとの拙速な戦争に反対してきたクロンターは、より詳しい事件の調査のために、人間たちの駐屯地であるアルフライラ山へ行くことを自ら希望する。
以前にシャランとともに働いたことがあり親交が深く、旅行を好み、地理に関心が強い人物。
大空を飛ぶことができる虎であるラミナビエントに乗り移動している。
 →アルフライラについては下水道のプリンセス参照




カゴン -KAGON-
種族:ダークエルフ
性別:男性
年齢:?歳(人間の歳だと約20歳)
所属:なし(風来坊)


カゴン

冒険心が豊かで、性格が非常に荒っぽいダークエルフ。
息苦しいアンダーフットに留まっていることができずに、世の中を流れ流され、偶然に出逢ったセリアを慕うようになってウェストコーストに住んでいる。
武器の製作や修理の技術に優れている。
ダークエルフ専用の飛行手段である、飛行船マガタを所有している。
 →ウェストコーストについてはアラド大陸の国家と勢力参照




シャラン -SHARAN-
種族:ダークエルフ
性別:女性
年齢:?歳(人間の歳だと約27歳)
所属:アンダーフット王宮→ベルマイア出張中(魔法師)


シャラン

ヘンドンマイア魔法学校長及び魔法ギルド長。
ダークエルフの村に伝染病が広がる以前から、人間たちに魔法の力を伝授して関係を深める為に、女王メイアが自分たちと接している国家の一つであるベルマイア公国に直接派遣した魔法部門の使者である。
シャランは魔法学校を運営しながら、人間たちに魔法を教え、ヘンドンマイア砂漠化の原因であるマナの不均衡を保護する「マイアーの大魔法陣」の修復にも力を注いでいる。
おそらくダークエルフの歴史上、人間たちと最も多くの関係を結んでいるダークエルフは彼女であるといえよう。
 →ベルマイア公国についてはアラド大陸の国家と勢力参照




その他のダークエルフ

・悲劇のヒロイン、ダークエルフの「狂戦士」ロキシー
 →ロキシーについては悲鳴の洞窟調査参照




メイア歴4年、アラド歴995年。


第一頁
ようやく私の故郷であるノイアフェラ近くに着いた。
この仄かに陰湿とした空気は既に私の記憶の中のモノとはまったく違う。
あちこちで見かけられるこの怪物たちは何だ。
彼らの中の何人かの複色の肌はダークエルフのそれだ。
同族たちはグールになっても故郷を離れる事が出来ずに、ただ周辺をグルグル周ってばかりいる。
私の家族たちも、彼らの中にいた。



第二頁
今ダークエルフを統治しているメイア女王は若いが、利口な方だと感じる。
しかし年老いた元老たちが支配しているものに対抗する為には、その力はあまりにも矮小と言わざるを得ない。
私がここで、謎を解き明かさなければ、再び意味ない悲劇が起こるかも知れない。
勿論アイリス様の仰ったとおり、このすべての出来事が人間たちによる陰謀なら、この世界で人間たちの存在を全て消し去るまで、私はこの命を捧げて努力するだろう。

シャープロンを含めたダークエルフの元老たちは、確かにこの事件が起こった事によって、自分たちの権力をより一層強められるチャンスだと思っているようだ。
大部分のダークエルフたちは人間を嫌っている為、数的に劣るにもかかわらず人間たちとの戦争を起こし、ある程度の戦果を挙げることができたなら、元老たちが持つ権力は永遠のものになるだろう。
だからこそ、より一層彼らの論理は検証される必要がある。
それでは疑問を投げかけてみるが、一体人間たちがなぜ?

実は最近まで人間たちとの関係は悪くなかった。
宮廷魔法師が人間の大都市に派遣されて、彼らに魔法を教えることによって交流は進んでいたし、ダークエルフのマガタが都市の大空を飛びまわっている時代だ。
勿論、益々人間たちとの関係が良くなっていくという事自体が、元老たちがより一層性急な判断を下すことになる危険信号だったとも言えるが。
人間たちは深い考えがない存在ではある。
歴史書を紐解いてみれば、人間たちが最も好む事は大地の占領のようで、彼らはお互いの土地を支配しようと同じ種族同士で大虐殺をする無慈悲で下等な存在のようだ。
しかしダークエルフたちは地下に住んでいるのに、あえて人間たちがその土地を支配したいと思うものなのか。
それに我々ダークエルフたちが人間の世界に出て、彼らに如何なる被害を与えているわけでもないというのに。

しかしこんな考えをしていれば、2つ目の疑問が生まれるのだ。
それならアイリス様が嘘をついたという事になるだろう…?
もし、そうならなぜ…?



第三頁
こちらへ来てから数日が経ったが、未だノイアフェラ村の中には足を踏み入れられなかった。
あまりに怪物たちが多いからだ(その中の大部分は私たちの同族である)。
ここで死んでしまっては、何の意味もない。
明日は潜伏術を使って村の中に入り、調べなくてはいけない。
こういう事になるとわかっていたなら、子供の頃もっと熱心に潜伏術の授業を受けたのに。



第四頁
いよいよ村の中へと潜入した。
幸いにも私の存在に気付く怪物はいないようだった。
ところで、こちらにはグールとレイスたちだけしかいないわけではなかった。
私の見たヤツらは確かに人間、そう人間たちの姿だった!
それならやはり人間たちが今度の事件に関係があるのだろか。



第五頁
今日は一日中、村の中にうろうろしている人間たちの後を尾行してその正体を探った。
いくつかわかった事は次の通りである。
彼らは皆が1つの組織の一員のように見えた(あるいは宗教の信者のようでもある。宗教というものは先天的に心の脆弱な人間たちが生きる為に必要不可欠な要素だと聞いた)。
その団体の名前はグリム・シーカー(Grim-Seeker)と言う。
彼らの儀式を見守っていると、誰かを待っているようだった。

「ここはディレジエ様が恩恵を下される場所だ」
「私たちに力をお与えくださる、審判なさる絶対神を迎え入れる準備しなさい」

ディレジエ…、どこかで聞いた名だな。



第六頁
伝染病にかかっている同族の攻撃を受けた。
私の潜伏術自体が完全でなかった為に、まだダークエルフの理性が残っているグールなら、私の存在を認識できるということを予期しなければならなかった…
傷を負わされただけでも伝染病が感染してしまうのだろうか…
家族を殺した元凶も捜す事ができずに、ここで虚しく死んでしまう事などできない…



第七頁
グリム・シーカーという人間の組織は、非常に秘密主義的かつ危険に思える。
ここで何か大きな任務をこなしているようにも見えた。
グリム・シーカーの中でも身分が高そうに見える者の後を追ってみると、非常に警備が厳しい場所があり、そこには何と…
「次元の狭間」が…!?

この日誌を読んでいる貴方がダークエルフであることを願って、次元の狭間の説明を付け加えておく。
次元の狭間は現世と共存する平行世界の一種である「異空間」と現世の間に出来た溝、狭間のことである。
数百年前、私たちダークエルフが偶然発見し、今日まで他の種族に知らせずに秘密裏に研究に研究を重ねたところによれば、「次元の狭間を利用すれば異空間を出入りする事ができる」。
勿論、数百年間の研究にもかかわらず私たちダークエルフでさえ次元の狭間の能力を自由に活用できたわけではなく、またその能力を利用するたびに生ずる異常現象をまだ制御する方法を探し出すことができなかった。
これらの事柄は、ダークエルフの間でも極秘だが、私は宮廷錬金術師という地位によってこれらの内容を知ることができたのだ。

これから次元の狭間は人間たちにもその存在が知られるようになるだろうか。
また次元の狭間は伝染病とはどんな関係があるのだろう…?



第八頁
伝染病に感染して死んだ同族たちを調査していたが、奇妙な点を見つけた。
それは「パープルマッシュルーム」という珍しい化学反応で、これは数百年前に人間たちの間で流行した「血の呪い」という現象と関連がある。
血の呪いは人間たちの古い文献によると、人間たちが「偽装者化」する現象が広がっていった事を意味しており、偽装者とは同族の血を渇望する化け物に変異した生物を意味する言葉だ。
偽装者の恐ろしい点は偽装者になっても昼間には普通の人間と見かけ上の違いがないという点で、これによりお互いが信じられなくなってしまい、同族の間で魔女狩りが行われたという。
幸いにも我らダークエルフが血の呪いにかかった場合、肌のあちこちに紫色のキノコ型の模様が浮かび上がり、これにより正常な者との区別が可能だった為に、私たちは血の呪いの悲劇を起こさずに済んだという過去がある。
そしてこれがパープルマッシュルームと呼ばれる反応の所以だ。

しかし人間たちの間でもここ数十年の間、偽装者が見つかったという公式的な報告はなされてはいない。
今になってまた人間たちの世界から血の呪いが始まったのだろうか。
血の呪いを退けた「プリースト」と呼ばれる者たちは、まだ偽装者たちを抹殺するために秘密裏にどこかで訓練していると言われているが、彼らに会えたならこの秘密の非合法関係の謎を知ることができるのだろうか。
もしこれがまた再び始まった血の呪いではないなら、血の呪いをかけたその誰か、あるいはその何かと、この伝染病は関係があるという話になるが。
このすべての事柄は、やはりあの次元の狭間だけが説明できるということかも知れない。



第九頁
自分の体から妙な臭いがする。
生臭いながらも香ばしい、致命的な毒性を持っているような…
私は伝染病にかかってしまったのだろうか。



第十頁
さて、少しの繋がりが生まれた。
ディレジエという名前…
そう、聞いたことがある。
アイリス様が話してくださった9人の使徒のうちの一人。
とても興味深い話だったので鮮明に記憶している。
確か、ディレジエは伝染病を撒き散らす使徒のはずだ。

それでは…私の推理はこうだ。

何者かが次元の狭間を利用して、異空間を通じてあの遠く魔界にいる使徒をアラド大陸に移動させたのだ。
次元の狭間という存在は自らは動かないものである。
なので確かにこれを扱う何者がいるという事だ。
その誰かが、ディレジエという名の悪魔をこの世界に送り込み、実体化させたことは明らかだ。

ディレジエがここノイアフェラにやって来たのだろうか?
アイリス様の話によると、ディレジエは自身が意図せずとも、常に周囲を伝染病の地獄にしてしまうらしい。
もしそうなら、ノイアフェラ周辺に住むすべての生物が伝染病にかかってしまうはずだ。
しかしたまに見ることができる一般の動植物たちは、特異な反応を見せてはいないので、今ここにディレジエがいるわけではなさそうだ。
あそこにいる人間たちも無傷ではないか。

ディレジエは次元の狭間を通じてここにやって来たが、再び次元の狭間を通じて移動させられたのだろうか…?
誰が、なぜ、この地下の小さくて静かなダークエルフの村に不釣合いなその強大な力を持つ使徒をここへ送ったのだ…?

少し合理的ではないかも知れないが、私はこんな考えをしてみた。
その「誰か」はここ、すなわちダークエルフの村へディレジエを移動させたわけではない。
いくら考えても世の中にその存在を現わさずして、静かに暮らしている我々、すなわりあまり脅威とならないダークエルフたちをわざわざ動揺させるような動機を持つ種族や人物の名前は思い当たらない。
魔法をはじめとする、ダークエルフだけが本来持っているようないくつかの能力もある事にはあるのだが、その力が恐ろしかったのならば、ノイアフェラのような小さな村にではなく、アンダーフットに直接ディレジエを送らなければならなかったはずだ。
そうしたなら、私たちの種族は一瞬で滅亡したはずなのだから。

それでは、このような仮説が成り立つ。
その「誰か」は次元の狭間を通じてどこかへディレジエを移動させた。
その過程で偶然にノイアフェラ近くに次元の狭間ができてディレジエのオーラが一部流れ出た。
次元の狭間の力を利用するということは、常に時空間の捻れを生み出す結果となり、とんでもない場所に別の次元の狭間ができてしまうという現象も、基本的な副作用の一つとして知られている。

このような考えを巡らせている時、頭の中で浮かんだある単語があった。
「転移」である!

現在の人間たちの世界は「転移」によって混乱が最高潮に達していると聞く。
最初に転移された生命体はやはりアイリス様の話の中に登場する使徒だった、たしか名前はシロッコと言ったか。

もしかして…このすべての出来事が関連しているのだろうか…?
すべてがその「誰か」が企てている巨大な陰謀の一環だとでもいうのか…?
これが本当に緻密な計画の一部であるなら、これは数百年に渡り実行されている可能性があり、恐ろしい気がする。
数百年前の「血の呪い」とまさに今ここで発見された「パープルマッシュルーム」現象がその証拠である。

次元の狭間。
古くから次元の狭間の秘密を研究してきた私たちの祖先たちは、いつも言っていた。
これは神さえ隠したがる重要な秘密なのだと、むやみに触れてはいけないのだと…

誰かが次元の狭間を勝手に扱っているのに、その罰を罪なきノイアフェラの民が受けることになるとは。

しかし、何より最も大きな疑問はこれである。
次元の狭間の持つ力を利用する方法は、私たちダークエルフだけしか知りえない知識であった。
はたして、何者かが、またどのようにして、数百年間のダークエルフたちの研究成果を圧倒するほどに、次元の狭間について理解しており、自由にその力を利用できるというのか。

それに、私たちダークエルフでも次元の狭間を利用した異空間の移動を完璧に成功させられる可能性はほとんどない。
そこには想像しがたいほどの大きなエネルギーが必要だからだ。
それほどのエネルギーを持っている物質は、魔界に存在するという「テラナイト」ぐらいしか私は知らない。

グリム・シーカーと呼ばれる人間の組織がこの計画の首謀者たちなのだろうか。
数日間、彼らを監視していたが、彼らは次元の狭間の存在とその機能については知りえていても、その使い方までは完全に理解しているようには思えなかった。

実際、人間たちも最近になって次元の狭間を発見し、これに対して小規模の研究が行われているとは聞く。
しかし人間は基本的に臆病な種族であり、私たちが知り得たレベルにまで到達するには、遥かに時間の流れが必要であろう。
私たちダークエルフでさえも、次元の狭間に秘められた秘密を調べる為に、どれほど多くの犠牲を経て、今日に至っていると思うのか。

一体、何が起きているのだろう。



第十一頁
たまに意識が朦朧として焦点が合わない。
傷を受けた左腕にキノコ模様が浮かび上がった。
パープルマッシュルームだろう…やはりあの時、伝染病に感染したのだ。

私の書いたものがこのまま失ってはいけない…
このまま日誌を自分で持っていては、あの同族たちのようにこの身体と共に消え去ることは明白だ。
どこか隠しておける場所を探さなければならない。



第十二頁
グリム・シーカーという者たちは、ここで単なる宗教儀式を行っているだけではなかった。
一種の実験をしているようだ。

実験用の人間と思える生命体を次元の狭間から出て来るいくつかの存在(幻影や邪念という言葉がもっとも適している)に与える。
その後、その実験体に包帯を巻いておき、放置する。

数日経たずして、驚くべき現象が起きた。
包帯を巻いて寝かせておいたその生命体が横になっていた席には、人間の形は消えて、包帯だけが縺れるように残っていたが、グリム・シーカーのメンバーの中で特異な複色の肌の持ち主が、その前で一言二言ぶつぶつと唱えると、包帯はじわじわと人間の形状を作りながら蘇るではないか!

偽装者を扱った人間の古代の文献の中で、このような場面があった。

「偽装者は地域によって様々な形のものがおり、オオカミやコウモリ、クモなど、人間の身体に動物や昆虫の体が重ねられたものが代表的だが、その種類を区別することができない怪物のように見えるものも数えきれないほど多く知られている。
最も特異なケースは、元の形態を保てなくなる事だが、この場合生命体の形は消えて、すべての生命オーラは宿主になった者に吸収される。
一般的に偽装者は昼間には平凡な人間の形をしており夜間になればその実の姿が現われるものだが、この場合の宿主は日中には私たちの周辺でよく見られる生物の姿をしていて、夜になれば宿主になった怪物が人間の姿で生きて動いたと伝わる。
黒い聖戦でオズマの暗黒騎士たちは、昼夜を問わずに偽装者たちを使うことができたと言われ、特に本や包帯、衣服などに偽装者のオーラを投影させて敵陣に浸透させた後、これらを活かし軍隊として活用する予想できない攻撃にプリーストたちは深刻な被害を受けて、敗北寸前にまで陥ったという…」

これにより確実になった。
偽装者と伝染病は、生物に感染した後の反応は異なってはいるが、明らかにどこかで繋がっている。
鍵となるのは廃墟になった私たちダークエルフの村で密かに偽装者を作り出している彼ら、グリム・シーカーと呼ばれる人間たちが握っている。



第十三頁
クロンターはアルフライラ山の入口に、人間たちと滞在していると語っていた。
彼の元へ向かい、ここで私が見たものを話さなければならない。
私の日誌の隠し場所を伝えておかなければならない。
そして、私が知り得た全てを誰かが引き継ぎ、この恐ろしい陰謀を暴かなければならない。

ますます身体に力が入らなくなってきた私が、はたしてそこまで行くことが可能だろうか。



第十四頁
13人の使徒。

グリム・シーカーたちの口癖のような祈祷の言葉にはこんなくだりがある。

「十三使徒をすべて守り抜くことはできないが、ただ一人の使徒を守ることで、彼が我らを滅亡から救ってくれるはずだ…」

アイリス様の言葉どおりなら使徒は9人のはずだが…?
かつて使徒であり、その座を剥奪された龍王バッカルを含んだとしても、3人足りないことになる。

そして…使徒たちは、彼ら特有の特別なオーラを纏っていると仮定すると、偽装者と伝染病の件に関連するとみられるオズマとディレジエとの間にも、どのような関係があるのか…?

そうだとしたらオズマと呼ばれるその悪魔も「使徒」なのだろうか…?

しかし、元々「使徒」という存在が何を意味しているのかがよくわからない。

そしてグリム・シーカーという人間たちはどうして世の中に混乱をもたらすと思われる「使徒」という存在を崇拜して、これらが救いを授けると信じているのだろう…?

ただの世紀末的なあがきなのだろうか。
それとも、何かの根拠があるのだろうか。



第十五頁
もはや、精神を集中して何かについて考えることができない状態に陥った。
髪の毛はますます抜けており、身体の構造が変わりつつあるようだ。辛く、苦しい。
これから文章を書くことができる力さえほとんど残ってはいまい。
一日中、この隠された洞窟で、苦痛の叫びをあげられぬまま、のたうちまわりながら横になっているばかりだ。
私の記憶も、一つ一つ消えていくようだ…
最後に家族たちの顔だけは覚えたまま、死んでいきたい。



第十六頁
一日中横になって死ぬ日だけ待っていると、急にすべての霧が集まって、それまでの間抱いていたすべての疑問たちの糸口がみえるような気がした!

ああ…そうだったな…

まさに、誰がこんな素晴らしくも恐ろしい事件を起こしているのかがわかった…

まったく、こんなことが…信じられない!!

そう、辻褄があうんだ… ああ…しかし、なぜなんだ!!!



第十七頁
時間がほとんど残されていないようだ。

失っていた力が、少しずつ戻ってきているからだ。
すべての力が戻ってきた後、私は完全なグールに生まれ変わるのだ。
もう本当に時間は残っていない。

すぐに日誌をここに隠して、もう少し力が戻ってきた時に、まだ完全に私の身体と精神が変わってしまう前に、クロンターのいるアルフライラ山のふもとまで走らなければならない!

クロンターよ。

私が君に会う前に力尽き、グールとなっても、是非とも私を見つけ出してくれ。
腐敗してしまい醜く変わったこの肉体に嫌悪するならば…、君を見つけて血が吐き出るような調子外れの大声で意味のわからない言葉を発する私に耐え切れなければ…、君の手で直接、私を殺してくれ。

その代わりに、

君に哀願するような悲しみの広がる目を、
その中から溢れ出る血の色の涙を、

君だけはわかっていて欲しい…

そして私の日誌を、探しだしてくれ…


   モーガン